REFLECT

永久機関に足を踏み入れてしまった。

明るい未来

ミュージカル刀剣乱舞陸奥一蓮」全55公演完走!

 

幕末天狼傳再演の千穐楽、声出しは出来ず観客は一席空けに座っているTDCホールで「もっと沢山笑いあえる日がくるってことを俺たちは知ってる」そう教えてくれた加州清光が、4年後の2024年5月に「ねえ、明るい未来あったでしょ」と笑った。

 

陸奥一蓮の座組での佐藤流司(&高橋健介

健介くんが「MCを流司とまわしてる感覚だった」と言っていたけど、二人お互いがいるから安心してボケツッコミオチタイムキープをしていて(あと松島くんは常に素晴らしい大包平)いつもいつも面白かった…正直微妙なゲーム結果のときもあったけど天才的MCで盛り上げていて、頭の回転どうなっているのか畏敬の念すら抱く。それでいて千穐楽「ひ?」のすっとぼけ顔も天才的にかわいい。 素の二人のちょっと照れ隠しが入ったパンフレットの対談も大好き。蜂須賀の100公演は全部清光が一緒にいたんだよね。大阪公演だったと思うけど、真剣必殺後の清光が足元フラつかせていたとき咄嗟に反応していた蜂須賀の姿も忘れられない。

 

◆脚本

正直、山姥切の話を聞かせてもらえず初日終わったとき

は???? 

となった。みんなで歌う曲で幕が下りることもなく、本丸の過去について掘り下げも無く。田村麻呂はまあ新解釈?で新鮮だったけれど、阿弖流為たち蝦夷サイドの描かれ方は一辺倒でつまらない。 ただ脚本がつまらなくてもキャストの演技と歌唱力(情念のぶつけ合い)で魅せてくれるので満足感があり行ける限り劇場へ向かった。わたしは刀ミュでは「つはものどもがゆめのあと」が一番好きなこともあって、作品としての共通点のある陸奥一蓮の評価が甘くなってしまう。花影からの脚本家交代については残念に思っていますが「葵咲本紀」と「パライソ」がわたしはイマイチなので脚本だけの問題ではない気もしている。刀剣男士と元主のやりとりが何よりも好きなのです。新作歌舞伎の月刀剣縁桐で日本語の美しさに痺れ、ゲキシネ歌舞伎阿弖流為では権力や阿弖流為たちの描き方にワクワクしたので比べてしまうとどうしても脚本自体が弱いなあと。

敗者に礎となれ、の言葉も驕りだと思うし心に残る台詞や今までの作品で感じていた史実と物語の交差する何かも無く、7振りの作中におけるアンバランスさも納得できない。蜂須賀にせめてソロの戦闘シーンが欲しかった。

 

◆刀ミュの加州清光

刀ミュ加州清光が誰よりも愛される世界をわたしは望んでいるため「ミュ本丸の初期刀が歌仙兼定」については知らないふりをします。今の、あつかしで初めて隊長を任され喜んでいた清光は初期刀ではありえないことは分かっている。だから「江水散花雪」を観たとき「加州清光二振り目説」を願った。役者のオタクとしては二振りの清光を演じるって滅茶苦茶おいしいし。

カンストしていなかったり古参と新参の中間管理職だったり、おそらく後付け設定で陸奥一蓮の加州清光のポジションが難しくなった中でも絶妙なところで加州清光加州清光として成立しているのが素晴らしかった。後輩となる対鶴丸、対山姥切、信頼している同僚対蜂須賀、お姉さん?ぽくなる対大包平。特に演じている役者の年齢経験が逆転する山姥切と加州の関係性も見ていて楽しかった。

ただ、三日月-清光の繋がりが薄く感じられたのは寂しい。「イヤだ」に嫌か、と苦笑いする三日月に少しだけ一緒に出陣したことを思い起させるか…くらいなので。台詞がそのままメロディに乗ったような歌声の「ねえ」、殺陣は鋭く速くしなやか、蹴りと突き、気だるい口調と大包平の大きな声に反応するジト目、驚いて猫のように飛び、地方勢力である蝦夷に肩入れしてしまうところ、戦闘後にチェックする爪紅と刀、背面納刀と抜刀は勿論だけど、普通の抜刀がマジで速い。そして音ハメする納刀がマジで格好よい。もう舞台上にいる常に1000%の加州清光が好きでしかない。8年前は役者の実年齢や拙さもあどけない可愛さに繋がってたかもしれないけれど、技術と実力で作られた今の清光はその何億倍も可愛い

 

中傷ベスト姿だけでも脱いだ!と驚いていたら次はシャツになって更に真剣必殺。毎回息ができなくて苦しかった。清光は必殺値が高いし検非違使の槍相手は確かに真剣必殺出してくれると助かるんですよね。「死ぬぜ」のドスのきいた大阪公演も、声のトーンを抑えた(殺気は高め)凱旋公演も何度みても心臓が止まりそうだった。でも一連のシーンを見られて本当に幸せでした。また加州清光に出会わせてくれてありがとう。

 

◆山姥切センパイ

陸奥一蓮は印象的なシーンの連続ではあるけれど、好きなところを挙げていくとすべてに山姥切国広がいる。特にM7「影ふたつ」が大好きだった。三日月と鶴丸の屈託ない笑い声にそれを懐かしむ山姥切の切ない眼差し。あの眩しい二人の光景が山姥切自身、愛おしくて大切だったと失われた今になって分かる後悔の滲む歌声。観るたびにべしょべしょ泣いてしまった。大悟くんの癖のない真っすぐな歌声もとても良い。江水を経て吹っ切れた山姥切はドーンとしてバーンとして非常に頼もしいまんばセンパイでした。

清光の屈託のない「約束だよ」に頷く夜鳴き蕎麦シーンからのM12「己映す鏡」も毎回心躍ったなあ。まんばセンパイ深呼吸からの納刀からはじまり(内番ジャージなのに美しく強そう)、それぞれの心情が重なり鶴丸と三日月の二振りに繋がる流れ。鶴丸と三日月の劇場全体に広がる歌声の音圧が圧巻だった。個人的には鶴丸と清光の紅白内番で並んでほしかった…せめてオフショで2ショットみたかった…

結局好きなシーンを列挙していくとすべてになってしまいそうですがM6,M13「確かなもの」出陣曲はあると盛り上がるし、今回は再出陣との違いも面白い。

隊長を代わる山姥切、鶴丸の呪いだろうかに返す「え?」、検非違使を「確実に仕留めるぞ」と隊をまとめ、大包平をかばった清光に逆上して力任せになる太刀筋、七味をふりかけ清光と取っ組み合いをするお怒りモード、どの山姥切も江水での経験を踏まえての在り方が感慨深い(すべて大包平のおかげとも言う)。それから田村麻呂にソハヤのことを話すのが他の誰でもなく山姥切というのもよかった。

 

箕面市立文化芸能劇場

2021年に開館したまだ新しい劇場。サイドシートの販売が無いなと思ってはいたけど行ってみて納得、全席どこからでも観える設計がされていた。前方は座っていないので分かりませんが、1階真ん中~後方、2階最前は手すりが邪魔にならず2階後方も距離はあるものの視界はとてもクリア。ホワイエの動線や休憩ベンチ、トイレの数も問題なく何より遠征民にありがたい駅直結。(だからといって日帰りできない上演時間はやめていただきたい)京都劇場は別として新幹線の駅から1本で行ける博多座とか梅芸とか<わたしは新大阪➡中津のルート>銀劇とか<品川からバス10分>と同じで大変ありがたかった。当引と追加販売で行ける限りチケットを増やせたし、一生ここの12列25番に座りたい。